2010-06-07
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タイポグラフィの空気感

いま、仕事で文字を描いています。デザイン用語で「タイポグラフィ」といいます。

文字はたったの4文字。FとEとEとL、FEELという単語です。

コンピュータのキーボードを叩けば、簡単に「FEEL」の文字がモニタに出てきますが、そのままでは今回の仕事(ブックデザインの仕事)に最適な空気感が出てきません。コンピュータの中には何千という書体(フォント)が入っていますが、どれを選んでもシックリ来ないのです。

そこで、まったく新規にレタリングをすることにしました。イメージが近い書体を参考にしながら、一文字一文字を描いていきます。少しずつ美しいラインになるように、直線や曲線を考えながら線を引いていきます。たった4文字ですが、とても根気がいる作業が続きます。実際に使用するサイズは小さいのですが、レタリング(文字のデザイン)はモニタ一杯に拡大して微調整をしていきます。ほんの少しでも間違えると、文字は途端にヘンな文字になってしまうので、注意深くていねいな作業の連続です。長時間続けていると頭が煮詰まってしまうので、たまに他の仕事に切り替えたり、コーヒータイムにしてちょっと休憩したりして気分を変えます。

そうすると文字は少しずつですが、確実に美しいカタチになっていきます。その美しくなっていく瞬間は、疲れをすっかり忘れさせてくれるので、「もっと美しくしよう!!」という気持ちがフツフツと湧いてきます。この気持ちはまるで麻薬のようなもので、一度知ってしまうとすっかり中毒になってしまいます。

グラフィックデザインに限らず、すべてのデザインは完成したものよりも、制作のプロセスの中にあるこの「麻薬」が楽しいんです。

このデザインプロセスの中にある「麻薬」は、けっしてあの人生を破滅させてしまうテレビニュースに出てくる「麻薬」とはぜんぜん違います。誤解の無いように。

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